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和平交渉の妨げともなっているパレスチナ難民の帰還問題。当のパレスチナ人は皆、イスラエルの地に戻りたがっているのだろうか・・・。

70年代から80年代にかけてソーシャルワーカーとして働いていたデイビッド・ベデイン氏は、「帰還する日」を待つ難民キャンプ住人の欲求不満と拠りどころのなさを見てきたという。その後、彼はジャーナリストとしてオフィスを構え、国連パレスチナ難民事業団(UNRWA)の首脳や、アラファトを含めたPLO幹部をインタビューするうちに、UNRWAがPLOの政策を推進していることに気づいたそうだ。その政策こそ「難民の帰還」であり、何十年たった今でもまったく変わっていないという。

もし、UNRWAが難民を元の場所に戻そうとするのではなく、新たな土地で新たな生活の基盤を作れるように指導してきたならば、今現在、難民としてキャンプに暮らしている人々はすでに、独立した生活を送っていられただろう。3世代にも渡って、難民としての生活を続けるなどということはなかったはずだ。しかし、難民が自立するということは、PLOがイスラエルを攻撃する理由の喪失につながるのである。難民を惨めな状態に置いておき、それがすべてイスラエルのせいであると世界に向けてアピールすることで、彼らはイスラエルへの攻撃を正当化し、人々の同情をひき、世界からの支援金を集めてきた。その金はアラファトやPLO幹部の懐に入り、豪邸の建設やテロ資金として活用され、一般のパレスチナ人の生活向上には役立っていない。アラファトが3億ドルもの資産を持ち、フォーブスの長者番付に登場していることからも、それは伺えるだろう。3億ドル(1ドル=110円とすると330億円)とは、難民を率いていく組織のリーダーとしてはあまりに異常な数字ではないか。

さて、ここで、上で述べたようなUNRWAにサポートされたPLOの政策「難民の帰還」は、本当に一般のパレスチナ人も希望していることなのか、パレスチナ政策調査センターが今年(2003年)7月に行った調査結果を紹介する。この調査は、次のような仮定的条件を提示した上で、5つの選択肢からもっとも納得のいくものを選ばせたものである。


仮定的条件: 数年間に渡るタイムテーブルにそって、
少数のパレスチナ難民をイスラエルに帰還させるという譲歩案で、パレスチナ指導部がイスラエルと妥協したものとする。

調査対象
: ガザ地区・西岸・ヨルダン・レバノンに住むパレスチナ難民4506人


表内の数字はすべて%

選択肢 西岸・ガザ ヨルダン レバノン 総合
イスラエルに戻り、イスラエル市民になる(あるいはならない) 12 23 10
西岸・ガザにできるパレスチナ国家にとどまり、イスラエルに接収された土地や、他の損失・苦痛に対して相応の賠償金をもらう 38 27 19 31
パレスチナの市民権を得て、いずれ土地の交換でパレスチナの地と交換されることになるイスラエルの所定の場所に戻り、もらうべき賠償金を受け取る 37 10 21 23
土地・損失・苦痛に対して相応の賠償金をもらって、滞在国にとどまり、そこの市民権かパレスチナの市民権を得る 33 11 17
土地・損失・苦痛に対して相応の賠償金をもらい、ヨーロッパの国かアメリカ、オーストラリア、カナダに移住し、その国の市民権かパレスチナの市民権を得る
上のすべての選択肢を拒否する 16 17 13
無回答


調査前に与えられた仮定的条件で、回答者が何らかの心理的影響を受けたということを考慮せず、この結果を見ると、イスラエル国内への帰還を強く望んでいるのは、パレスチナ人の10人に1人ということになる。73%は、賠償金さえもらえれば、イスラエルへの帰還にはこだわらないようだ。

この調査結果を見る限りでは、一般のパレスチナ難民は、イスラエルへの帰還をそれほど欲していないということになるが、そうすると、イスラエルへの帰還権を強く求めているのは、イスラエル乗っ取り計画を持つアラファト・PLOや他のイスラム過激派であると言えるのだろうか。大半のパレスチナ民間人は、帰還権を主張しながらも、本当にイスラエルの地に戻りたがっているのではなく、ただ落ち着いた普通の暮らしが欲しいだけなのかも知れない。そうであるならば、彼らは、私利私欲に走る権力者にあおられて、イスラエルをつぶす計画のために利用されているということになる。イスラエルをつぶすことを目的とするのではなく、イスラエルと共存して、ともに栄えていくことを目標とするようなリーダーが彼らの中から現れ、現政権を打倒し、民主化に向けて動き出すためのエネルギーを引き出してくれる日を待つしかないのだろうか。

最近、パレスチナ人は「自分たちの金はどこに行ってしまったのか」との疑問を投げかけているそうだ。スイスや他の国の秘密口座にあるということを知っている者もいるという。パレスチナ人が、本当に自分たちのことを考えてくれるリーダーを求めるようになる日は、もしかしたら、それほど遠いことではないかも知れない。


今回の調査については、下にイスラエル・トゥデイからの記事を転載させていただいた。


参照記事:
UNRWA and Right of Return Agenda ... by David Bedein
The 'Right of Return' Debate Revisited by Max Abrahms
Palestinians demand missing PA money
*2つめの記事は、今回の調査結果が、前もって与えられた仮定的条件により影響を受けたとの視点で書かれている。上の表に出ているデータは、この記事の中から得たもの。
*無条件でイスラエルに戻れるのであれば、さらに多くのパレスチナ人が、仕事や、より豊かな生活、自由を求めて民主主義の確立しているイスラエルに戻ってくるはずであるとの視点もあることを記述しておく。


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